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ハハ-ハウス

主用途:住宅
内容:リノベーション
分類:設計・施工
設計担当:伊藤茉莉子+寺澤宏亮
施工担当:澤田大悟
専有面積:65㎡
構造:鉄筋コンクリート造
写真:貝出翔太郎

上質な素材の連なり

一人暮らし向けの賃貸マンション1階の22㎡の住戸3つを、区画間の壁を抜いて65㎡の1区画の住戸に改修する計画。住み手はこのマンションのオーナーで、70代の夫婦。足腰の弱りや、元々住んでいた家の環境の変化をきっかけに、都内にいる娘夫婦の家の近くへの移住を計画を決めた。

1階1フロア全体が1度空室になって工事可能になるように、我々KITIの不動産部門にて、マンションの賃借の状況管理し、それらのスケジュールの中で先行して、住空間の設計と施工の段取りを進めた。

間取りは、元々L型に配置された3室の壁を南北・東西に抜いたため、L型の外形の中で間取りを解くことになった。長い間一緒に住んできた夫婦は、日中はそれぞれの部屋でそれぞれ別の時間を過ごすことが多く、互いの時間を尊重するライフスタイルであった。そのため、L型の端と端の掃き出し窓のある位置に、2人の寝室を配置し、その間をつなぐ南北に長い空間をLDKとした。水回りは採光窓のないL型の内回りの角に寄せ、玄関から寝室までの廊下は、車椅子でも通過できるような、廊下幅で設計した。

LDKの空間は、細長い空間の特性を生かし、より奥に伸びやかに感じるようにすることがポイントになった。キッチンとダイニングの天板を長手方向に連結して配置し、PSにより生じる壁をキッチンの目隠し壁として利用した。ダイニングの壁面には、キッチンのカップボードの家具と連なるキャビネットを造作し、さらにそこからソファ側にも造作ソファを連ねることで、キッチンからリビングの窓面の空間に連続性を持たせている。さらに、その対面では、ラワン仕上げの壁を設え、それぞれの上部の梁に間接照明を仕込むことで、空間が長手方向に真っ直ぐ伸びていく伸びやかさが、素材・家具・照明の3つの効果の相乗で感じられるようにした。

全体の素材は、ベージュ色を基調として全体の調和をなすように、木材の染色・カラーモルタル・リノリウム・壁紙・ブラインド等々の、選定や調色を行った。高齢の夫婦の特性も加味して、都会のマンションには、得難いような、落ち着きと上質な素材感を演出することを狙っている。

アクセントとして、リビングに面する大きな建具の面材には、ラタン(籐編み)を用いた。目線を遮りつつ、奥の光が透けてみえる自然素材で、名作椅子や家具に良く使われる素材を建具に応用した。廊下の建具には、コストをかけすぎないように既製品建具を用いているが、①天井高さに揃える、②戸当たり枠をなくす、③把手と鍵を改造する、④壁の色と揃える、などの細部の工夫を施すことで、オーダー建具と同等の美しさを実現している。

ダイニングの中央に浮かぶライン照明は真鍮製の造作照明で、細いワイヤーを使って吊っている。通常の照明では目立ってしまう電気配線を、天井ではなく近接する壁側に配線することで、照明の上側に視認できる太い線がなくなり、まるで浮かんでいるかのようにみえる意匠を実現している。

主用途:住宅
内容:リノベーション
分類:設計・施工
設計担当:伊藤茉莉子+寺澤宏亮
施工担当:澤田大悟
専有面積:65㎡
構造:鉄筋コンクリート造
写真:貝出翔太郎