KITI Design Office KITI Design Office

blog

デザインと機能性そして余白のある住まい

~町田の家~

このお住まいは、建築に深い知識を持つご主人と奥様、二人のお子さんのための住宅です。
専門性の高い視点と、日常の暮らしやすさ。その両立が、この家づくりの大きなテーマでした。

デザイン性と実用性の間を探る家づくり

設計にあたって重視したのは、使い勝手や性能を落とすような、奇をてらいすぎないこと、そして決めすぎないことです。
デザインとしての面白みを持ちながらも、家族が日々無理なく暮らせる実用性とのバランスを丁寧に探りました。

とくに課題となったのは、子ども部屋のあり方です。
限られた面積の中で、将来の家族構成の変化にも対応できるよう、空間の使い方に柔軟性を持たせる必要がありました。

区切りながら拡張性のある子ども部屋

子ども部屋は、はじめから明確に固定するのではなく、リビングと同程度の大きさを持つ空間を、区切ったり、つなげたりできる構成としました。
個室としても、収納としても、将来的には別の用途にも使える、拡張性のある空間です。
リビング側(南西)の窓から入った風が、グリッド棚やヌック空間を超えて子ども部屋(東)へと抜けていくよう計画し、空間が分かれていても、家全体としての通風や一体感が損なわれないよう工夫しました。

決め切らない仕上げが生む住まいの表情

この住まいでは、ユニークな仕様をいくつも取り入れています。
たとえば、ツインカーボを用いた建具や、構成要素がそのまま読み取れるラフな納まり。
棚板の側面もあえて隠さず、切りっぱなしの表情を残しました。
また、天井はコンクリート現しとし、素材そのものの質感を空間に取り込んでいます。
完成された美しさというよりも、つくり方が見えることで生まれる、素直な佇まいを大切にしました。

内と外をつなぐ市松模様の床

フローリング以外の床には、マチコV(Pタイル)を市松模様に貼っています。
この貼り方は、はじめから強く意図していたものではなく、「市松模様、面白いかもしれないですね」というお施主様との会話から生まれたものでした。
結果的に、既存のバルコニー床のパターンと呼応し、室内と屋外がゆるやかにつながる構成になりました。このように、偶然に生まれた関係性を楽しめることも、この住まいの魅力のひとつです。

将来を見据えた子ども部屋の入り口計画

子ども部屋の入り口には、5枚の建具を設け、どこからでも出入りできる構成としています。将来的に子どもが増える可能性も見据え、動線や使い方を限定しない計画としました。
一方で、すべてをラフに仕上げているわけではありません。子ども部屋のグリッド棚や建具まわりは、空間を上品に見せるため、小口テープを貼り、丁寧に仕上げています。ラフさと端正さの使い分けもこの家の大切な設計要素のひとつです。

設計者の自邸だからこそ生まれた余白のある住まい

南町田の家は、設計者自身が暮らす住まいだからこそ、試行錯誤や、決め切らないこと、偶然を楽しむ姿勢などが随所に表れています。
完成した瞬間だけでなく、これからの家族の成長や暮らしの変化を受け止めていく住まいです。

写真:貝出 翔太郎