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楓灯ふうとうの家

主用途:住宅
内容:戸建てリノベーション
分類:設計・施工
設計担当:伊藤茉莉子+安齋幸太郎
施工担当:澤田大悟+石川光希
構造設計:(有)桑子建築設計事務所
構造担当:桑子亮+木村友美
構造:木造
延べ床面積:118.57 ㎡
写真:貝出翔太郎

構造の継承、路地と光

細い路地の先、四方を建物に囲まれた都市の隙間に建つ築年数不詳の木造アパートを、家族のための住まいへとリノベーションした本計画。近隣で飲食店を営む家主が、娘夫婦のためにこのアパートを住宅へと改修し譲り渡すことを決めたことから、本計画は始まった。
現地調査に訪れた際、飲食店の脇の路地で子供たちが遊び、近くで家族がその様子を見守る姿があった。そうした光景は、近年の都市ではあまり見られなくなった、地域の中で自然な交流が生まれる環境であり、我々はその風景に強く惹かれた。
新たな住まい手からは、「家族や友人が集まる明るい家にしたい」「離れていても家族の気配を感じられる家にしたい」という声があった。また四方を建物に囲まれているため1Fよりも2Fの方が採光効率がいいことは明らかだったが、LDKは1階に配置したいという要望が寄せられた。

そこで我々は、新たな家族の動線となる斜向かいに建つ家主の飲食店とこの新しい家をつなぐ道を路地の拡張ととらえ、住宅内にも路地の豊かさを引きこみ、路地と地域と一体的に感じられる住宅を提案した。具体的には前面道路から本物件へと続くアプローチから建物をまっすぐ貫く広い土間と、トップライトを設けた光庭を配置し、住宅内部にまるで外部のような明るい空間を作り出した。光庭は住まいの中心となるように、水回り以外の居室はすべて光庭へ面するように配置することで、採光計画上不利な1階へも最低限な光をもたらすよう計画した。1階のLDKは冷暖房効率を考え設置した引き違い戸はLDK空間での透過性を考えガラスに、2Fの各居室の小窓はツインカーボとすることでプライバシーを確保しつつ、光の透過によって家族の気配を感じられるようしている。採光や通風を必要としない浴室・トイレなどの水回り設備は北側に集約し、空間構成の合理性を確保した。

既存建物の再生にあたっては、構造体の確認と補強を実施。
腐食した柱を新しい構造体へと入れ替え、傾きの補正を行い、現代の住宅性能へと引き上げた。
また、以前のアパートの記憶を継承する意図から、一部の柱や軸組を意図的に残し、光庭と立体的に交差するブリッジ部にはその構造をあらわしながら、新しい生活空間の中に位置付けている。
ブリッジまわりの手すりには、梁下までガラスを設け、子どもの安全性と視覚的な広がりを両立させ、既存の構造材を引き立たせる設えとした。

両親から譲り受けたアパートの記憶を活かしながら、地域のつながりを住まいに取り込むことを考えた本計画。本住宅の完成と同時期に、家主の蕎麦屋も次世代への継承を見据えた改修工事が進められている。家主の飲食店とこのアパートの名前には共に「楓」の文字が使われていた。「楓」の花言葉は「美しい変化」「大切な思い出」「調和」などを指す。そこで我々は「楓」と建物の構成を掛け合わせを「楓灯の家」と名付た。路地を介して2つの生活がつながり、日々の営みを通じて、家族や地域との新たな関係が育まれていくことを願っている。

主用途:住宅
内容:戸建てリノベーション
分類:設計・施工
設計担当:伊藤茉莉子+安齋幸太郎
施工担当:澤田大悟+石川光希
構造設計:(有)桑子建築設計事務所
構造担当:桑子亮+木村友美
構造:木造
延べ床面積:118.57 ㎡
写真:貝出翔太郎