マンションのリノベーションでは、既存の空間をどこまで更新し、どこを活かすかという判断が設計時の重要なポイントになります。すべてを新しく作り直す方法もありますが、既存の状態を見極めながら活かすことで、工事の負担やコストを抑えながら住まいを整えることも可能です。
今回は、既存の床を活かしながら空間を再構成した「町田の家」のリノベーションをご紹介します。
マンションのリノベーションでは、既存の空間をどこまで更新し、どこを活かすかという判断が設計時の重要なポイントになります。すべてを新しく作り直す方法もありますが、既存の状態を見極めながら活かすことで、工事の負担やコストを抑えながら住まいを整えることも可能です。
今回は、既存の床を活かしながら空間を再構成した「町田の家」のリノベーションをご紹介します。
こちらの家では、床を既存のまま活用し、天井や間仕切りを中心に空間を再構成しました。
マンションリノベーションでは、床も含めて全面的に行うことも多いですが、今回は既存の状態を確認したうえで、床の更新を行わない方針としています。また、外周面についても、断熱状況を確認しながら既存部分を活かしました。
既存の床を残す場合、床にわずかな凹凸が現れるリスクはあります。しかし全面更新に比べて工事コストや工期を抑えられるため、今回の計画では仕上げや上貼りによって調整しながら活用しています。
既存をすべて新しく置き換えるのではなく、状態を見極めながら必要な部分だけ手を加えることも、リノベーションの考え方のひとつです。
既存の床を活かしたこの物件は、住戸平面を大きく再構成しています。
この住まいの特徴は、「用途を限定しない部屋」を設けていることです。
一般的なマンションでは子ども部屋をあらかじめ作ることが多いですが、実際に子ども部屋として使う期間は意外と短く、その後は物置として固定されてしまうことも少なくありません。
そこで私たちは、LDKとは別にリビングと同程度の広さを持つ余白のある空間をつくりました。居室内には固定された間仕切りを設けず、子ども部屋、収納、将来的には別の用途にも変化できる柔軟な空間としています。
可変性のある空間に対して、造作には具体的な役割を与えています。
玄関横には小上がりの部屋を設け、その床下には季節物を収納できる大容量のスペースを確保しました。唯一建具で仕切られるこの小部屋は、普段は寝室用として利用し、来客時には「逃げ場所」としても利用可能です。
また、グリッド棚の正面にはヌックをつくり、下部収納にはクッションを置くことでソファや小さなベッドとしても使えるようにしています。
隣戸側にはデスクスペースを設け、LDKとの境には事務所で製作したツインカーボの建具を住宅用に整えて採用しました。
枕棚の下にはハンガーパイプを設け、急な来客時には衣類をここに収め、建具で目隠しできるよう計画しています。
「用途を限定しない部屋(子ども部屋)」とLDKの境にはグリッド棚を配置しています。
それぞれの窓を開けると、共用廊下側の北東からリビングの南西方面へと風が棚の隙間を通り抜ける構成です。
収納や家具が空間を分断するのではなく、視線や風の流れをゆるやかにつなぐ存在となっています。
普遍的なLDKと、可変性を持つ部屋がL字につながるこの住まい。
一つ一つの造作に明確な役割を与えることで、家族の変化に寄り添う空間をつくりました。
既存の床を活かすという判断も含め、すべてを新しくするのではなく、必要な部分を見極めながら住まいを整えていく。
町田の家は、リノベーションならではの柔軟な考え方から生まれた住まいです。
写真:貝出 翔太郎(1,3,4,5,6枚目)