KITI Design Office KITI Design Office

大倉山おおくらやまの家

主用途:住宅
内容:リノベーション
分類:設計・施工
施工:澤田大悟+清水満
設計:伊藤茉莉子+安齋幸太郎
構造:鉄筋コンクリート造
専有面積:57.78㎡
設計期間:2025年7月~2025年11月
施工期間:2025年11月~2026年3月
写真:貝出翔太郎
---
不動産ディレクション:cowcamo

白の上質さ、手触り

幹線道路から少し上がった小さな山の中腹にあるマンションの一室の改修計画。最上階に位置した住まいは窓外には緑が寄り添い、同時に空へと視線が抜けていく。約55㎡という限られた面積のなかで、この「抜け」と呼応するように、過不足のない上質さと、生活の手触りが同居する住まいを目指した。

出身地が今の住まいとは遠い施主は「一度どこかに腰を据えて、娘に故郷を作り、地域に根付いてみたい」「どんな時代でも、どのようなテイストでも対応できる簡素で上質な空間」といっていた。流行を纏うのではなく、時間に耐える骨格をつくること。素材と線の整理から、住まいの形を立ち上げていった。

既存住戸は梁の凹凸が多く、過去の改修の痕跡も重なって、床高さの不揃いと不陸が顕著だった。まず行ったのは、この乱れを丁寧に整理することだった。水回り以外の床をフラットに揃え、梁・柱・設備の取り合いで発生しがちな余分な線を消していく。ダクトルートは輪郭の線を増やさないように計画し、天井面と壁面が静かに連続するよう、ラインを合わせて空間のノイズを抑えた。また壁の出隅部分をR形状にし、光が滑らかにつながっていくことを意識した。

仕上げは施主の希望により、壁と天井を漆喰、床を絨毯とした。光を柔らかく受け止める漆喰の面と、足裏への感覚を穏やかに変える絨毯の床が、生活の中に上質さをもたらす。

平面は、LDK、水回り、WIC、夫婦の寝室と子ども室で構成する。個室は必要最小限の寸法に留め、その分LDKに面積を割いた。住まいの中心に広がりを確保し、家族の時間が自然に集まる居場所をつくるためである。さらに、LDK—WIC—寝室をつなぐ動線と、サニタリー-パントリー-キッチンをつなぐ動線、2つの回遊を廊下の周縁に組み込み、コンパクトな住戸のなかに歩行の選択肢と家事の動線をまとめた。サニタリーの扉は開け放つことで隣接収納の扉としても機能し、建具が「閉じるため」だけではなく、日常の状態に寄り添う装置となるよう意図している。

寝室と子ども室の仕上げは施主施工とした。私たちが施主とともに立ち上げた空間に、施主自身の手仕事が重なることで、住まいは“作品”から“故郷”へと変わっていくかもしれない。新たに根を張ろうとする家族の決意が、日々の小さな更新として空間に蓄積され、時間とともにいっそう愛着の深い場所になることを願っている。

主用途:住宅
内容:リノベーション
分類:設計・施工
施工:澤田大悟+清水満
設計:伊藤茉莉子+安齋幸太郎
構造:鉄筋コンクリート造
専有面積:57.78㎡
設計期間:2025年7月~2025年11月
施工期間:2025年11月~2026年3月
写真:貝出翔太郎
---
不動産ディレクション:cowcamo