太子堂たいしどうの家

都内40㎡の一人暮らしのための住まいのリノベーション。
限られた面積の中で、シンプルな間取りでありながらも、ミニマルで整った印象を得られるよう、空間の寸法や納まりの一つひとつに気を配った。

小規模住戸では梁が近く、圧迫感を覚えやすい。そこでリビングの窓際では、梁の下面に合わせて棚板を通し、その上部にエアコンを隠蔽した。棚板が梁を受け止めるように走ることで、梁の存在が意匠の一部となり、空間全体が穏やかに整う。エアコンには蓋を設け、使用していないときには壁面と同化して姿を消すように計画している。

キッチン側では、個室の壁の出に合わせて造作カウンターと吊り戸棚を組み、梁とキッチン境界の不整合を家具の構成によって吸収した。家具の秩序が、天井のラインや壁の流れを整理し、狭さを感じさせない連続感を生んでいる。

コスト面でも、僅かな操作で最大の効果を得る工夫をしている。
既製品建具を用いながらも、フルハイト納まりを実現するために、建具を特注せず、天井高さの方を建具の規格寸法に合わせて調整した。些細な違いだが、コストをかけずに美しい納まりと全体感を得ている。

手数の少ない設計ではあるが、家具を置いたときに空間がすっと整い、静かな秩序と心地よい余白が生まれるよう意図している。